夜が閉じる頃。
夜明け前のロンドンは、まだ石畳のほうが冷たい。
ケンジントン宮殿の窓辺には、白い花の香りが残っている。
私は花瓶の水を替えながら、その静けさに耳を澄ました。
その朝、宮殿の空気はどこかいつもと違っていた。
人生は、ときどき準備より先に役割を運んでくる。
誰かが大きな時間を引き受ける時、部屋の静けさまで変わるのだろうか。
夜に咲く白い花は、朝が近づくにつれて静かに閉じてゆく。
可憐さは、守られるためではなく、折れずにいるためにある。
私はその香りを吸い込みながら、新しい時代の気配を感じていた。